●極軸設置の必要精度などをまとめます
PoleMaster という極望(極軸望遠鏡)の代わりをするレンズの付いたデジタルカメラが発売されました。 弊社でも取り扱っています。 パソコンが必要ですが便利な電子極望で、JILVA-170にお使いのユーザー様も大勢おられます。 ポータブル赤道儀への装着は簡単なので、ご希望があれば取付金具の製作を請け賜ります。
ふつうのドイツ式赤道儀には 通常は極望の穴の上に取付けることが多いようです(極望が見えなくなっちゃうのはご愛嬌?)。 この場所に付ける極望(天頂プリズム付きの眼視用)は、1970年ころに高橋製作所から供給されたことがあります。 当時高校生だった星爺より1歳年上の九州のYさんがタカハシさんに進言したアイデアです(Yさんはその後ニコンに就職され木曽観測所の105cmシュミットカメラなどを担当されました)。
PoleMaster はDPPA法(
基礎的な手法はこちらを見てください)のような手法で極軸との平行を校正するので信頼性は高いです。 元々赤道儀に付いている内蔵の極望の校正や据付式赤道儀の設置に使うのにも重宝すると思います。
しかし、極望の信頼性が高ければ極軸設置が完璧になって、長い望遠レンズの長時間露出ができるわけではありません。 この機会に極望と追尾の基本を考えてみましょう。
●撮影レンズと露出に応じた極軸設置の精度
こうした計算は複雑な座標変換を行なって検討しますが、ここでは略図でザックリと説明します。
下の図のように真南の星を追尾する場合に注目しましょう。 極軸の方位(東西)の設置誤差は追尾撮影中の星空の赤緯(南北)方向のズレに影響して、赤道儀が正確に追尾をしても星は赤緯方向に流れて写ってしまいます。 真南でない方向の星を追尾すると、このズレに赤経(東西)方向のズレすなわち追尾速度の狂いが混ざってきます。 頭の中で想像してみてください。 追尾速度のズレはPモーションがあるので観察しにくいですが、赤緯のズレは眼視で星を見ても写真を撮っても観察できます。 その星のズレを見て、方位の極軸設置を修正(上下の修正は東北か西北の星を見る)する手法はドリフト法とも呼ばれます(説明は別の機会に)。
図のように極軸設置の東西のズレによる赤緯方向の星の流れ(ズレ)は6時間後に最大になります。
ということは、露出時間が1時間なら赤緯方向のズレは極軸設置誤差の1/6になります(重要!)。 概略計算なので完全ではありませんが、1分露出の場合は極軸設置誤差の1/200ほど赤緯方向にズレて写ると考えて差し支えありません(ぜひ暗記しましょう!)。
たとえば50mmレンズの追尾誤差の許容が±40″とすると、4分露出なら最悪のケースを想定してかなり厳しく見ても極軸設置は1°ズレていてもまったく問題はありません。
JILVA-170に300mm望遠を搭載して4分露出する場合でも、極軸設置は10′の精度で大丈夫です。
どうも天文ファンは基礎的な計算をしないで機材に凝る傾向がありますね。 星爺が編集者時代に計算の記事は嫌われるというので、ちゃんとした記事を怠ったことが原因かもしれません(反省)。
セコメントをする